君の上に降る雨が、せめて穏やかなものであるように

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君の上に降る雨が、せめて穏やかなものであるように

08 美緒(4)

「紗子さん、本当に驚かせてすみません。そして、自らの素性を隠して美緒ちゃんに近づいて、ごめんなさい。美緒ちゃんには、私は看護師だと言っていたのですが、本当は違うんです。私は、人工知能です。松岡啓輔さんが生前に買った……」  ケイスケさんは必...
君の上に降る雨が、せめて穏やかなものであるように

07 美緒(3)

着信音がけたたましく鳴り響く中、ケイスケさんの取り落とした〈窓〉が地面の上で震える。画面には『紗子』という名が表示されている。しかし、着信に応じることはできないのだ。ここにいる誰も、『肉声』を持っていない。 「ど、え、これ、これ……エイジく...
君の上に降る雨が、せめて穏やかなものであるように

06 美緒(2)

まずやることは、ケイスケさんの古いLINEアカウントにアクセスするための〈鍵〉を準備することだ。  準備のため、どうしても、一度タンクのところに戻らなければならない。俺はケイスケさんの位置情報コードがきちんとポケットに入っていることを確かめ...
君の上に降る雨が、せめて穏やかなものであるように

05 美緒(1)

移動は一瞬だ。 息を呑むような音がして、俺は目を開けた。ケイスケさんが目の前にいた。半年前とほとんど変わらない。 ――いや、以前はなかった不安そうな色が見える。俺は「ども」と手を挙げた。ケイスケさんはまじまじと俺を見て、やがて微笑む。 「…...
君の上に降る雨が、せめて穏やかなものであるように

04 Twitterの滝(4)

ケイスケさんと別れてから、半年ほどが瞬く間に過ぎた。  日々は忙しく、しかし単調に過ぎていった。  Twitterの滝は来る日も来る日も、遅くなったり速くなったりしながら絶え間なく流れ続ける。前方にも、そして後方にも、延々と続く果てしない言...
君の上に降る雨が、せめて穏やかなものであるように

03 Twitterの滝(3)

夜が深まるにつれ、Twitterの滝はその勢いを落とし、光量を減らした静かな流れに変わっていた。LikeやRTの光がときおり穏やかに瞬く以外は、淡い光のカーテンがゆらゆらと揺れながら降りていく。  焚き火の周りでは、談笑が続いていた。俺が集...
君の上に降る雨が、せめて穏やかなものであるように

02 Twitterの滝(2)

遙か眼下では、ボブがいつもどおりのきびきびした口調で班員たちに指示を飛ばしているのがかすかに聞こえてくる。  “死にたがり”の方はだいぶ大きく見えるようになっていた。彼が腕に抱えているのはたぶん、画像データだ。まだ不要タグの付けられていない...
君の上に降る雨が、せめて穏やかなものであるように

01 Twitterの滝(1)

Twitterは、どうどうと音を立てて降り注ぐ瀧に似ている。  それは膨大なデータの奔流だ。以前写真で見たナイアガラの瀧なんて目じゃないくらいの、堂々たる偉容。果てしなく続く瀧の連なりは、まるで空が半分に割れたかのようだ。  銅色の空から、...
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