前回の続きです。


前回書いたとおり、長男は、まったく手のかからない赤ちゃんでした。
まず体が頑丈。ほとんど熱を出さないですし、骨太で、食べるのが好き。水分も自分でたっぷりとれる。珍しく39度の発熱をした赤ちゃん時代に、娘はスポドリを凍らせて砕いて口に入れてやっていたので、同じようにしてやらねばと思っていたら、ぐったりしていたのにいきなりがばっと起きて「ちゃ!!」と叫び、渡した湯冷ましをごくごく飲んで、またバタンと寝て、一晩で熱が下がったことがありました。生きる力が違いすぎる。
そして彼は、あまり自己主張をしない子でした。
でもそれは、たぶん、私が、娘と次男の要求に振り回されていたから、遠慮していたんじゃないだろうか。忍耐強いのか、いろいろと感じ取る子だったのか…。オムツ取れるのも早かったし、水も全然怖がらず、と言って無鉄砲というほどでもなく、『武勇伝』みたいなものがほとんどないんですよ。あえて言えば、プランターの土を味見してみてたくらいだろうか。で、いざ我慢できなくなった時にはいきなり爆発するという子でもありました。ぐずって泣くという段階をすっ飛ばしていきなり姉に嚙みついたりするんです。そしてこっぴどく叱られるという…。かわいそう…。
小学校の高学年の頃に「どうやらこの子はグレーゾーンらしいぞ」とわかってくるまで、私は長男にきちんと向き合う余裕がなかったんです。本当に申し訳ないことをしました。
そして彼は「学校に行きたくない」と渋り始め、中学一年生の五月に親の財布からお金を盗むという大問題を引き起こし、提出物も出せなくなりテストに行けなくなり、部活で心が折れて、不登校になりました。
…って今振り返るとこのようにきちんと筋道が立っているなってわかるんですけど、彼が中学生だったころは本当にわけがわかりませんでした…。夫がアルコール問題から立ち直ってしばらくたった直後に不登校になっているので、たぶん彼は、順番を待っていたのだろう…と思います。私の前できちんと自分の抱えている問題をさらけ出せる順番を、私の準備が整うまで、十三年も待ってたんだね…徹頭徹尾、生まれたころからずっと、優しい子だったんだな…。って、今ならわかりますが…わからんかったよ、ごめんな…。
さて彼がまた外に出ていくようになるまで二年ほどかかりました。
きっかけは、受験だったと思います。
彼が中学三年生のころ、私はもうすっかり彼に「普通の中学生みたいに」行動させるのを放棄していました。市が運営している支援センターに行けるようにはしてたんですけど、彼は行くふりをして、私が出勤したのを見計らって帰ってきてサボるということをしていたので…自分で行く気にならなければ私が何をしても無駄だなって痛感したんですよね。
彼は今、「俺が受験生になった時、母ちゃんは俺を全部放ったらかしてなんもしてくれなくて…」ってぶつぶつ言いますが笑、いやいや、私が「放棄した」からこそ彼は自分で立とうと思ったんだと思うんですよねえ。自分で立たないと、どこにも行けないもんね。
あの頃のことを長男は「夢の中にいたみたいであんまり覚えてない」と言うんですが、「もう高校なんて行けずに人生終わりなんだ」って思っていたそうです。ところが、夏休み明けの面談で、担任の先生から、「今からでも公立に行けるんだよ」と言われ、「えっまだ間に合うの?」と思った長男、少し希望を取り戻しました。
で、その面談で、担任の先生が挙げた条件が2個ありました。
①二学期と三学期はなるべく遅刻も欠席もせずに学校に登校して、改善の兆しを数字で見せること
②勉強をある程度頑張って、五教科で合計100点を目指すこと
…100点って!!!
って私は反射的に思ってしまうんですけど(一教科20点ってことでしょ)当時の彼にとってはそれでもすごい努力が必要な点数だったんです…数学8点とかやで…。
面談の帰り道、長男が言ったのです。
成績上げるにはどうすればいいのかって。
当時娘が駅近くの塾に入って大学受験チャレンジ真っ最中だったので、その日のうちに体験授業の予約を取って、事情を話して、五教科で100点目指せるカリキュラムを組んでもらって、塾に入りました。
びっくりしました。
私は通信制の高校に行くんだと思っていたんですよ。それか、何年か休むのかなって。私は、彼が優しい男だということは知っていたので、中卒でもバイトでも、何とか生きていけるだろうと思っていました。家庭を壊すような暴力性があったら話は変わってきますが…あと前にも書いたような気がしますが、グレーゾーンのためか、発達が二年くらい遅いような気がしていたので、他の子と同じタイミングじゃなくても、高校卒業資格を取れさえすれば、何とかなるだろうと。二十歳過ぎてから大検取ったっていいじゃない。
それがまさか、その年に受験すると言い出すとは思いもよりませんでした。
まあでもそれで全部うまくいったわけではなくて。相変わらず学校は遅刻したり休んだり、3日いったら2日休んで、みたいな感じ。塾も10分程度の遅刻はザラでした。すっぽかしたこともありました。先生ほんとすみません…。
でも最後の方には、「顔を上げて塾に入ってきて挨拶するようになった」「遅刻しないで来るようになった」と塾の先生たちに褒めていただいて笑、何とか五教科で100点の壁もクリアして(最終的には120点くらいになったのかな)、晴れて公立高校に入学し、はじめの半年は遅刻したり休んだりしてましたけど、今では毎日楽しく通い、曲がりなりにも「テスト前だから友達と勉強してきた」とか「部屋で課題やってた」なんて発言も飛び出すようになりました…(ほんとにやってたかどうかはこの際どうでもいいんですよ)
なのでたった三人しか育てていない、狭い観測範囲での話にはなるんですけど、
赤ちゃんの頃の自己主張にはちゃんと向き合った方があとあとラク
赤ちゃんの頃自己主張をしなかった子は思春期に大きな自己主張を行う
勉強とか運動とかさせるのもすごく大事だけど、何より自己主張の方法をきちんと教えるというのがすごく大事
という学びを得ました。育てやすいお子さんたちはこの限りではないと思いますが。
なので遅ればせながら私は今、長男となるべく一緒に行動して、買い物の荷物を持ってもらうお礼にちょっとしたスイーツを買って一緒に食べたり…ということをするようにしています。
あと、いまだに自分の気持ちを表現するのを億劫がるところがあるので、彼が感じているであろうことを言語化して「あなたが今抱えている感情はこういうことかもしれないよ」と伝えるようにしています。
こないだ一緒にドラッグストアに行ったとき。
長男「あ、麩菓子がある…。買ってくれたりする?」
私「いいよー」
長男「えっ。えっとあの、麩菓子もいいんだけど、あっちの棚も見ていいかな」
私「いいよー。…麩菓子だったら母ちゃんが買ってくれる可能性が高まるかなって思って言ってみたけどこんなに簡単に『いいよ』って言われるならもっと高くて好きなやつにしよう!って思ったでしょ」
長男「俺の考えてること全部あてるのやめてよ!!」
いやわかりやすすぎるだけじゃろ…笑




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